B樋が受け持つ水平投影面積n

A屋根図面工場は、大規模な建屋が多いこともあり、規模に比例して雨漏れによる被害が非常に多く見られております。特に雨漏れの被害が大きいのは、建物の上に設置してある内樋に多くみられています。特にプラットホームでは角樋を建屋すれすれに設置し、ノコギリ屋根などでは建屋の真上に内樋が設置しており、月日を経て、枯葉やゴミが詰まる事で雨漏れの被害が多くみられ建物の老朽化が進行してしまいます。

したがって、新築時の設計の段階で雨漏れの被害を最小限にするために、片流れ屋根や切妻屋根などシンプルなつくりが良いと考えます。軒樋が建屋の外側にあることで枯葉やゴミ等が詰まったとしても外で水が溢れるので安心です。工場増設などにより、やむを得ず内樋にする場合は、なるべく大型のものを設置する事と腐食しにくい素材を選択する事が重要です。当然、ゴミなどが詰まった時に溢れ防止で、オーバーフロー管の設置や、防水性は非常に重要になります。弊社としましては、雨漏れで工場の大切な商品を台無しにしては意味がありませんので、慎重に雨漏れの修理を実施いたしました。

昭和初期に開発された大波スレートの屋根、小波スレートの壁ともに、1936年頃から2004年まで取引されていましたが、アスベスト(石綿)に含まれる発がん性物質が問題視されて、生産中止になりました。現行のスレートは石綿が含まれていませんので安心ですが、2004年までの大波スレートは、近隣に与える影響がありますので、屋根は金属のスレッシュルーフで覆い、外壁は金属の角波トタンで覆う必要性があります。劣化した大波スレートは特に固定用ボルトやスレート面のひび割れで雨漏れを起こしやすい素材です。したがって、アスベストと雨漏れに関して、スレッシュルーフで覆う事は、非常に効果的になります。ご依頼いただきました上三川町の食品工場様、大変ありがとうございました。

雨漏れによる屋根・樋の改修工事前状況(Before)

工事前状況としましては、屋根形状が内樋で小さい断面の塩ビ角樋と屋根大波スレートの劣化による雨漏れを引き起こしていました。特に大雨時には、塩ビ角樋では、雨を受けきれず溢れることもありました。屋根面については、割れ部分をコーキング材で対策してありましたが、コーキング材自体の劣化で雨漏れを無くすのは厳しく、1階部分は原料倉庫になっており、工場内部の品質管理と作業効率とゆう点で非常に難しい状況でした。アスベスト飛散防止とゆう観点からも、一目瞭然でしたので改修工事が必要な状況でした。

設計条件

①内樋断面形状を大きくし雨漏れを無くす事。【雨水排水計算】
②屋根・外壁面からの雨漏れを無くす事。
③アスベスト飛散防止。

【雨水排水計算】
雨水排水計算は以下の通りとなりました。
B樋が受け持つ水平投影面積n
A屋根図面
C主な地域の降水量

A降雨量の算出
栃木県宇都宮市の10分間の最大雨量(1982年に観測)35.5㎜  
1時間当たりの最大雨量   35.5㎜×6= 213㎜   降雨強度213㎜/h→5.92×10⁻⁵m/s
屋根面積 屋根の水平投影面積 + 壁面積の50%  (15.3m×4.9m)+(15.3m×3m×1/2)=97.87㎡ 98㎡
<谷とい>のため降雨強度は1.25倍と致します。
213㎜/h時の降雨量: 5.92×10⁻⁵m/s=0.0592×1.25=0.074 ℓ/s
0.074 ℓ/s× 98㎡= 7.252 ℓ/s

B軒樋の排水量「Q₁」の算出 ・軒樋形状=w0.43m×h0.1m(最浅部)の角樋
軒樋の雨水排水量(Q₁㎥/s)をクッターの新公式により算出致しましたす。

軒樋の雨水排水量(Q₁㎥/s)

C竪樋の排水量「Q₂」の算出(竪樋形状はVU125 内径131Φとします)
竪樋の雨水排水量(Q₂㎥/s)をトリチェリーの式により算出致しましたす。
Q₂=C・A・√2gh(トリチェリーの式)
Q₂=竪樋の排水量(㎤/s)
C=流量係数(0.6)
A=竪樋排水有効断面積(134.8㎠)
g=重力加速度(980㎝/s²)
h=軒樋潤辺高さ(10㎝)

Q₂=0.6・134.8・√2・√980・√10
 =11322.83㎤/s→ 11.32ℓ/s

D判定結果
判定結果としては以下の通りとなりました。
・軒樋 降雨量7.252ℓ/s <軒樋の排水量25.9ℓ/s  OK  安全率3.57倍
・竪樋 降雨量7.252ℓ/s <軒樋の排水量11.32ℓ/s OK  安全率1.56倍

設計提案

既存内樋解体状況
既存内樋解体状況

内樋雨漏れの改修につきましては、既存の内樋W150とその周りの屋根・壁を撤去し、樋断面大きくしようと考えました。下地を桟木とコンクリートパネル12mmで作り目地とビス穴をコーキング材で防水処理をしました。
樋は谷コイル(板金工事)を採用しました。谷コイルは、弾力性があり錆びに強く耐久性・耐候性にも優れており、トタンと同じ要領で加工できますので安心です。雨水たて樋・内樋とも余裕を見た大きい断面のものに交換し、突発性の大雨にも対応できるつくりにしました。

谷コイル(内樋)改修状況
谷コイル(内樋)改修状況

屋根の改修につきましては、大波スレートの上に、金属製のスレッシュルーフで葺き上げます。当然、雨漏れ対策・アスベスト飛散防止に効果的ですし、ダブル構造により断熱性と防音効果も高まります。既設の大波スレート屋根をはがさない工法ですから、工場内作業に影響を及ぼさないので安心です。

スレッシュルーフ(屋根)改修状況
スレッシュルーフ(屋根)改修状況

外壁の改修につきましては、小波スレートの上に木下地を組み角波トタンで貼り付けました。外壁についても屋根同様ダブルの構造ですので非常に効果的になると考えました。

引渡し後の状況(After)

工事完了
工事完了

屋根・外壁をスレッシュルーフと角波で覆った事は、雨漏れ対策・アスベスト飛散防止に効果的でした。建物の断熱性についても工場内部の空調の能力も改善されました。特に温度差による結露も改善され工場内の環境も非常によくなりました。
雨水排水計算により、樋の断面を大きくした事により、雨漏れが改善されスムーズに雨水が流れましたし、突発的な夕立にも十分排水することができました。

お客様から『雨漏れが無くなって助かりました。工場内の空調も効率的になりました。』
と大変喜ばれ気持ちよく引渡しをさせて頂きました。
こちらこそありがとうございました。