目次(設計・施工の大切な所)
☆相談窓口【建築指導課・消防署予防課・労働基準監督署】
1 危険物一般取扱所 指定数量10倍以下の基準について~メタノールの場合~
2 洗浄用 99%メタノール変性アルコール 安全データシートについて
3 延焼のおそれのある部分の見解 ~建築基準法と消防法の違いについて~
4 危険物エリアと機械室エリアに分ける配置計画・給排気はプッシュプル排気装置
5-a 洗浄用メタノールを導電性の容器に入れる際、静電気対策のためアースクリップを容器と底板に接続
5-b メタノール(第2種有機溶剤)の移しかえはドラフトチャンバー内で行い中毒予防
5-c 乾燥工程は局所排気装置で行う
第4類危険物 特に特殊引火物・第1石油類・アルコール類・第2石油類は、空気よりも重く水より軽い性質があり引火点が低く発火するとすぐ爆発的に燃え広がるため難しい素材になります。また、トルエン・アセトン・メタノール(第2種有機溶剤)など有機溶剤中毒予防規則の対象となるものもあり作業環境測定と結果に応じた適切な改善が必要となります。したがって、作業場内部の空気滞留を最小限とし火災発生を未然に防ぐ事、作業者様のばく露及び中毒予防する事が重要となります。特に給排気計画はプッシュプル排気装置を24時間稼働させることで火災と中毒対策となります。弊社としましては、そこを設計の最も重要なテーマに掲げ業務遂行いたしました。以下の通りご参照お願いいたします。
1 危険物一般取扱所 指定数量10倍以下の基準について~メタノールの場合~
メタノール(第4類アルコール類) 指定数量400L 水溶性液体 引火点12℃
★今回の事例⇒指定数量9.9倍(1日の最大使用量3960L)
- 保有空地 指定数量10倍以下 3m(今回の案件)/指定数量10倍超 5m
- 壁、柱、梁、床、屋根:不燃材
- 窓、出入口:防火構造
- 延焼の恐れのある部分の壁:耐火構造
- 延焼の恐れのある部分の出入口:特定防火設備
- 延焼の恐れのある部分の窓:設置禁止
- 貯留設備:必要
- 換気設備:引火点40℃未満は強制排気(換気回数5回/h)
- 避雷設備 指定数量10倍以下 無し(今回の案件)/指定数量10倍超 必要
- 静電気除去設備:必要
- その他:ABC10型消火器など
- 事業所内での危険物最大数量の確認:自治体に確認(用途地域による)
アルコール類 今回:5160L < 上限:8000L…OK
2 洗浄用 99%メタノール変性アルコール 安全データシートについて
【特徴】
・危険有害性があるので局所排気装置かプッシュプル排気装置の必要性有り
・引火性の高い液体で気発しやすい
・吸入すると人体に有害
・目に入った場合、水で良く洗わなければならない
・中毒性が強い
化学名 | エチルアルコール | メチルアルコール |
含有量 | 89.84重量% | 10.16重量% |
化学式 | C₂H₅OH | CH₃OH |
管理濃度 | 設定されていない | 200ppm |
形状 | 液体 | 液体 |
引火点 | 13℃ | 12℃ |
比重 | 0.7947 | 0.7928 |
蒸気密度 | 1.6 | 1.1 |
消防法 | 危険物第4類引火性液体 アルコール(400L) | 危険物第4類引火性液体 アルコール(400L) |
労働安全衛生法 | 非該当 | 第2種有機溶剤 |
毒劇物取締法 | 非該当 | 100%は劇物であるが本製品は劇物ではない |
3 延焼のおそれのある部分の見解 ~建築基準法と消防法の違いについて~
〈建築基準法上の延焼のおそれのある部分〉
・相互の延床面積の合計:500㎡以内の建築物は一の建築物とみなされるため延焼ラインは発生しない。
・外壁:防火構造~石膏ボード12.5㎜と9.5㎜の2枚に角波トタンなど
・出入口、窓:防火設備~スチールドア、手動防火シャッター(スラット0.8㎜)、窓は網入りガラス
・相互の延床面積の合計:500㎡以内の建築物でも延焼ラインは発生する。
・外壁:耐火構造~ALC版100㎜など。危険物一般取扱所側は1時間耐火構造
・出入口:特定防火設備~自閉式スチールドア、電動重量シャッター(スラッド1.6㎜)※自火報連動
・窓:設置禁止
4 危険物エリアと機械室エリアに分ける配置計画・給排気はプッシュプル排気装置
・危険物エリアと機械室エリアをFDでエリア分け
・空調機は外気処理空調機(プッシュ)と排気FAN(プル)でプッシュプル排気装置とする
・プッシュプル排気装置は24時間連続運転 ※停止すると蒸気が機械室エリアに廻り引火する可能性があるため
・危険物エリアに設置できる空調機機種の選択肢が少ないため、機械室エリアに外気処理空調機を設置しプッシュプル排気装置を実現 ※温度管理⇔洗浄品質管理
※ 給排気はプッシュプル排気装置とする
・ドラフトチャンバー及び局所排気装置の面風速0.4m/sで中毒予防【労基署】
・危険物エリアの換気回数5回/h以上で滞留を抑制し引火対策とする【消防署】
5-a 洗浄用メタノールを導電性の容器に入れる際、静電気対策のためアースクリップを容器と底板に接続
・人からの静電気を予防
・危険物を容器に入れる際、重力による静電気を予防
・容器は導電性のあるものを使用
5-b メタノール(第2種有機溶剤)の移しかえはドラフトチャンバー内で行い中毒予防
・洗浄用メタノールを導電性の容器に入れる際、ドラフトチャンバー内で行う
・容器から製品を取り出す際、ドラフトチャンバー内で行う
・静電気対策のためアースクリップ接続
・扉の解放時に面風速0.4m/s以上必要
5-c 乾燥工程は局所排気装置で行う
・製品の乾燥工程のスピードを上げる
・静電気対策のためアースクリップ接続
・パンチングメタル穴部分の面風速0.4m/s以上必要
・扉の解放時に面風速0.4m/s以上必要
【ご相談承ります】
これから新築される工場様はもちろんのこと、修繕・改修でお困りの工場様に対し少しでもお役に立てれば幸いです。どうぞお気軽にお問い合わせください。
株式会社TASAKI 電話番号 028-670-5290
(参考)危険物一般取扱所の設計図面と基準
【補足】
・耐溶剤性一覧表によりエタノール・メタノールとの相性を確認
・洗浄用メタノールを導電性ポリプロピレン容器に入れる際、静電気対策のためアースクリップをつなぐ
・導電性ポリプロピレン容器 表面抵抗値 10³~10⁶Ω
・洗浄用メタノールを容器に入れる際、容器底の金属にアースクリップをつなぐ
・貯留設備は、床勾配1/200でU字溝・桝を設置
・電気・設備 危険物エリアは防爆型を使用
・局所排気装置の透明板は耐熱塩化ビニル樹脂を設置
・洗浄用メタノールを入れる容器はポリプロピレンを採用
・桝上部分の換気回数5回/h